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30代の編集者/ライター。ゲイ。映画、音楽大好きですが、仕事では書く機会がなく...。ので、こちらでは趣味全開にしちゃいます。
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映画はエンターテインメントでありつつも、アートフォームであって欲しいと願っています。    同じような気持ちで映画を観ているひとの慰みになれば幸いです★
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原題:Angel
製作年:2007年
製作国:イギリス/フランス/ベルギー
監督:フランソワ・オゾン
出演:ロモーラ・ガライ、サム・ニール、ルーシー・ラッセル、
シャーロット・ランプリング、マイケル・ファスビンダー



___________________________________

『焼け石に水』以降のオゾン監督作品は、だいたい観ているのだが
(あ、『リッキー』はまだ観てないけど)、
作品によって、鑑賞後に釈然としない思いが残ることが、よくあった。
それが何なのか、明確に答えられなかったのだが、
この作品を観て、わかったことがある。
フランソワ・オゾンは”ドS”なのである。

友人に薦められて原作の小説を読んだというオゾン監督は、
主人公のエンジェルに惚れこんだらしい。
しかし映画内でのエンジェルの描き方といったら、まるで容赦がない。
その魅力より、欠点や欺瞞を暴き出すことに重点を置いている印象すら、
与えるほどなのだ。

人や事象に魅了されたとき、あなたの心は、
その表側だけでなく、裏側まで知ろうという動きを見せるだろうか。
僕はそう願うタイプだ。
これは「できるだけ真理を探究したい」という生き方に基づいた
欲求の発露であり、自分自身に矛盾を感じることは、ない。
より深く知ることで、さらに魅了される場合もあれば、
幻滅を抱く場合もあるだろう。
しかし、自分にとって都合の好い思い込みだけを
積み重ねていくような現象認識には、価値がないと感じる。
オゾン監督もきっと、同じはずである。

ではなぜ、彼と僕との感覚に断絶が生じるのであろうか。

恐らく、動機が違うのである。

独占欲の強さか、それとも保身の表れか。
僕は恐らく後者だ。
曖昧なものに価値を置くことで、自分を傷つけたくない、
自分を貶めたくないという、どこか消極的な発想なのである。

しかし積極的だからといって、よいことばかりとは限らない。
自身の欲求を満たすがために、
事象の核心にズカズカと入り込んでいく行為はエゴイスティックで、
慎みに欠けやしまいか。
いかにも個人主義の欧米人らしい発想だし、植民地主義的だとすら感じる。
僕がオゾン監督に憶える不快感とエキゾチズムの源泉はここにあるのだと、
今回思い当たった次第だ。

しかし映画監督として、やはり無視できない力量を持った
人物であることだけは確かだ。
ストーリーテリングの巧みさ、絵作りの素晴らしさ、
細部へのこだわり、そして魅力的な俳優を巻き込んでいく求心力……。
本作も現代映画に求めたい及第点を、軽く超えてくる。
透徹すぎる視点にうんざりさせられることも多々あるが、
今後も彼の作品に、注目してしまうんだろうなぁ。

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原題:藍宇
製作年:2001年
製作国:香港
監督:スタンリー・クワン
出演:ジョウ・シュン、リウ・イェ、チュン・コン、
ワン・シュアンパオ、ツォン・チーチュン


_______________________________

北京のゲイカップルを題材にした香港映画で、
原作はネット上で大ヒットした『北京故事』という小説。
監督はゲイであることをカムアウトしている、スタンリー・クワンで、
音楽はフェイ・ウォンのプロデューサー、チャン・ヤードンが担当している
(中国圏にはめずらしく、洋楽のエッセンスを巧く消化できる人だが、
本作では特に印象に残る音がなかった……)。

中国大陸において同性愛は、全体主義に逆らう生き方、
そして西欧の病んだ文化に毒された愛のかたちと認識されている。
加えて原作が発表された当時は、
治療を要する精神疾患としても扱われていた(2001年に解除)。
こうした背景は、原作に充分な陰影を与えているらしいのだが、
映画の中ではほとんど確認できない。

カップルには10歳近い齢の差があり、
年上のほうは女と結婚して、社会的体面を保とうとする。
偽りの結婚生活は結局破綻するわけだが、
映画はそこらへんのドロドロを全く描かず、
再会したふたりの物語へと、すんなり移行してしまう。
また彼が「年下の相手を、(中国)社会に反する生き方へと巻き込んでしまった」と
苦悩する姿も、全く描写されない。
ふたりの愛が社会的な圧力に曝される場面をことごとく削ぎ落とした結果、
どこの国にもありそうな、純愛メロドラマへと成り下がってしまったのだ。

しかし、客観的な意見を取り払ったところでは、
ひとりのゲイとしてウルウルきてしまい、困った(笑)。

チャン・ユアン監督の『東宮西宮』でも、
ゲイ要素の強い役柄を演じた経験があるフー・ジュンは、
素朴な顔とガチムチした身体で、いかにもゲイ受けがよさそう。
「男とは遊びさっ」て感じで超自己中なのだが、
金遣いは異常によく、相手に車から一軒家まで買い与えてしまう。
なんかバブル時代の日本のオヤジみたいで笑えたが、
好景気に沸く北京の狂騒が垣間見えるようで、興味深い。
あ、また客観的になってしまったけど、
実は僕もこのテの男(金遣いを除く)に
ポイ捨てされて泣いた経験があるので、ついつい感情移入してしまったのだ。

相手役のリウ・イェはまず、田舎臭い大学生として登場する。
中途半端な長髪が見苦しく、ところどころで女っぽい媚態を見せるので
「何こいつ、不愉快」と、ネコの縄張り争い的に鼻息を荒くしていたのだが、
社会人に成長して男らしく垢抜けたにも関わらず、
いまだあどけない表情で、心配そうに相手を見つめる眼差しの美しさには、
思わず引き込まれる。
しまいには「いいな~、僕もこんな恋愛したい」なんてため息が出てしまった。
ああ自分って、何てくだらないオカマ。
でもまぁ、たまにはいいかもね、こういう映画も。

凡作だが、俳優たちの魅力、そして演技が素晴らしい一本である。

腐女子なそこの娘さん、ぜひポチッと

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原題:鬼子來了
製作年:2000年
製作国:中国
監督:チアン・ウェン
出演:チアン・ウェン、香川照之、ジャン・ホンボー、
澤田謙也、ユエン・ディン



_________________________________

俳優として活躍しているチアン・ウェンの監督第二作で、
カンヌ映画祭ではグランプリを獲得した作品。
第二次世界大戦末期における中国の片田舎を舞台に、
平行線をたどる中国農民と日本兵のコミニュケーションを、
滑稽味たっぷりに描く。

戦争をテーマにした歴史もので、画面は白黒、
おまけに登場人物は洗練からほど遠い、農民ばかり。
なのに陰鬱で重苦しい雰囲気はまるでなく、
カラリとしたユーモア感覚に貫かれたスピーディな展開からは、
監督の才気がほとばしりまくる。

現代まで腹の探り合いが続く日本と中国の過去を、
中国人監督が描く以上、
おいしいところを中国にもっていかれても、文句は言えまい。
この映画に登場する中国人は、純朴な農民がほとんど。
そして日本人は、軍人ばかり。
両国の戦争の歴史を忠実に描写すれば、
自然にそうなってしまうのか。
抵抗する術などろくに持たない農民が策略を練ったところで、たかがしれている。
しかし命令には絶対服従と叩き込まれているうえに、
生来の真面目さが加わった日本兵は、状況次第で手の平を返す。
同じ怒りを爆発させるにしても、
スクリーン上でどちらの姿が純粋に見えるかは、明白であろう。

しかしここまでハードボイルドな日本人の姿を、
外国で製作された映画の中で観るのは、初めてかもしれない。
欧米の映画の中で描かれる日本人の姿といったら、
わざわざここに書くまでもないほど酷いものだが、
本作に登場する日本人には、少なくとも威圧感がある。
日本軍の宿舎の中庭に放り込まれ、
オドオドと周囲をうかがうチアン・ウェンの演技からは、
軍人に戸惑う農民以上のカルチュアル・ギャップが感じられ、強く印象に残った。

個人的には、チアン・ウェンのように熊っぽい男、すごくタイプなのだが、
日本陸軍の指揮官役を演じた澤田謙也の肉体美と甘いマスクにも、ハッとさせられた。
「この人、誰なんだろう」と思ったのだが、
日本より香港などのアクション映画で成功を収めている、稀有な俳優らしい。
ネット上にインタビュー動画が落ちていたので、チェックしてみたのだが、
パーソナリティ的には典型的な体育会系(或いはヤクザ)、といった趣。
本作のように作品性の強い映画へ出演するのは、恐らく最初で最後だろう。
しかしこのキャスティングは見事というほかなく、
彼の中に眠っていた役者としての可能性を、十二分に引き出している。
香川照之よりも、よっぽど強く印象に残ってしまった次第だ。
しかし、聡明な香川は本作の撮影記を出版しており、
これが立派な日中文化交流論になっているらしいので、
いま触手が動いている。

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原題:MOTHER AND CHILD
製作年:2009年
製作国:アメリカ/スペイン
監督:ロドリゴ・ガルシア
出演:ナオミ・ワッツ、アネット・ベニング、ケリー・ワシントン、
サミュエル・L・ジャクソン、ジミー・スミッツ



_________________________________________

出した者、出された者、そして迎えたいと願う者。
3様の立場から「養子縁組」という制度を見つめ、
その制度に関わらざるを得ない人生を歩む女性たちの姿を描く。

僕は「エンタメ大作」には全く興味がないので、
選ぶのは「リアリズム重視のメッセージ性が強い佳作」か、
或いはそのどちらでもない作品ということになる。
本作は間違いなく「リアリズム重視のメッセージ性が強い佳作」だが、
テーマやメッセージそのものより、
個々のキャラクターを丹念に描こうとする仕事ぶりが素晴らしい作品だった。
映画らしく、劇的な偶然に頼るストーリー展開も目立つが、
不思議と自然で、深みのある物語として受け止められたのだ。

アネット・ベニング演じる「出した者」は、
母親の死を機に再び人生と向かい合う設定で、
表情までイキイキと若返る演技、演出が見事。
個人的には、彼女のようなスタンスで子供と向き合う女が発散する類の
わざとらしさが、非常に痛かったのだが、
それも計算ずくの演技だったのだろうか(だとしたらすごい)。
しかし人生において、もう交わることのないひとりの人間にこだわり、
執着してしまう後ろ向きの姿が哀しくて、かなりグッと来た。

ナオミ・ワッツ演じる「出された者」は、
人生をたったひとりで生き抜く決意を固めている。
あくまで自立にこだわる厳しさが美しく、
個人的には強い共感を憶えてしまった。
こうした女性が周囲に投げかけていく波紋(特に恋愛やセックスにおいて)を
漏らさず描いているところが現代的で、
旧態依然のヒューマニズム映画に対して行われた、明確な線引きを印象付ける。
ナオミといえば、リンチの不条理な『マルホランド・ドライブ』と、
ブロンドのアーパー役ぐらいしか観たことがなかったので、
その中間に当たるシリアスな演技派ぶりに瞠目。
本作の華やかな側面を一身に背負い、またその責務を充分に果たしていた。

ケリー・ワシントン演じる「迎えたいと願う者」は、
一見お気楽に見えて、実は不妊に悩む人々の共感を集めなくてはならない、
重要なキャラクター。
脆い自我が養子を得て、骨太に成長していく姿を描くだけで、
もう一本別の映画を撮れそうである。
黒人の登場人物が数多く登場する本作だが、
彼女が「未来」と「希望」の側面を担っているのも、よかった。


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原題:Sexo con Amor
製作年:2003年
製作国:チリ
監督:ボリス・ケルシア
出演:シグリット・アレグリア、ボリス・ケルシア、
アルバロ・ルドルフィ



_________________________________

南米の細長~い国、チリ産の映画。
この国で製作された映画を観るのは、生まれて初めてだ。

まずチリの人々ってどんな暮らしぶりをしているのか、
興味津々だったのだが、
この映画を観る限り、貧富の差はそう苛烈でもなさそう。
南米ならではの熱い太陽と、
開放的な空気を伝えるポップな画面作りには、好感が持てる。

本作はセックスをテーマに据えた艶笑もので、
国内では観客動員数記録を塗り替えるほど、ヒットしたらしい。
夫婦や不倫などさまざまな関係を結ぶカップルが何組か登場し、
快楽のためのセックスを貪り合い、
男女の立場に分かれて利害を主張し合い、
それぞれ壁にぶち当たっていくサマを、コミカルに描いている。

鑑賞している間はそれなりに楽しめるが、
新しい視点なり、非凡なキャラクターなりがまるで見当たらないのは、
表現としていかがなものだろう?
特に男の登場人物はスクラブばかりで、
「こんな画一的なキャラクターを描く時代は、とっくに終わっているのでは」と
ツッコミを入れたくなる。
なかでも一番マシな役を演じた、
俳優兼監督のボリス・ケルシアが描きたかったのは、
「今も昔も変わらない、男女間の諸行無常」あたりなのかもしれないけど、
その前時代的な感性には、おっさんの自己満臭が濃厚に漂う。
ど~もいただけない。

例えばアメリカの恋愛TVドラマなんか、どうせ中身はペラペラだろうが、
キャラクターの作り込みだけは、しっかりとやっているのではないか。
生活の中には実際に存在しているのに、未だメディアで描かれていないような、
ユニークなキャラをいち早く登場させる試みは、
それだけで観衆を惹きつけるのである。

本作に出てくるような男たちが、もし大都会にいたとしたら、
その本性や弱みを剥き出しにしないよう、
慎重にオブラートでくるんでおかない限り、
いい女からは鼻もひっかけられないだろう。今はそういう時代なのだ。
チリ映画、という響きは非常に新しいのだが、
内容的にはすでに語りつくされていることばかりで、ちょっとがっかり。


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