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popdorianz@yahoo.co.jp
10年住むと、映画ライフに関する土地の利はあまり意識しなくなるが、
改めて振り返ってみよう。
★ロードショー映画館へのアクセス…可もなく不可もなし。
ただし近年、近隣にTOHOシネマズが出来たので、何度か足を運んだ。
★TSUTAYAへのアクセス…
都内だと新宿店か渋谷店が最も使えるのだが、
いずれも週一度訪れるのは、ちょっと億劫
(それでも10年間で最も世話になったとは思う)。
ゲオは「1週間100円」という低価格路線で
レンタルDVD業界の価格を破壊し、個人店を閉店に追い込んだ。
TSUTAYAでさえ、一部店舗ではその後塵を拝すかたちとなっている。
最近やっと「今年観た映画」が100本を超えたのだが、
その中でゲオでレンタルした拾いものを、いくつかレビューしていこう。
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★『仮面/ペルソナ』

原題:PERSONA 製作年:1967年
製作国:スウェーデン
監督:イングマール・ベルイマン
出演:ビビ・アンデーション、リブ・ウルマン、グンナール・ビョンストランド
ゲオの品揃えは数年前まであまりにもひどく、ほとんど立ち寄らなかったのだが、
近年は僕のようなタイプの映画ファンを意識してか、
旧作のラインナップを充実させてきている。
ベルイマンの再発がズラッと揃っていたりするから、驚くのだ。
本作はそんな恩恵に預かったうちの一本。
とにかくモノクロでも、光の加減でこんなにも表情の違う美しさを数多現出させられるのか、
と目を見張る画面の素晴らしさ!
装飾を極力排した舞台美術が冷ややかなトーンを醸し、
赤裸々な性描写は、すべて台詞で語られていく。
しかしせっかくの魅力的なテーマが、
カタルシスのないクライマックスで力を失っているのが残念。
「母性の欠如」という共通点を見出した女たちが、
お互いの境界線を見失うという発想は、ちょっと飛躍しすぎではないか?
共感し合いこそすれ、憎しみ合う姿しか描かないのなら、
それなりの結末を期待するのが人情というものである。
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★『渇いた太陽』
原題:SWEET BIRD OF YOUTH
製作年:1962年
製作国:アメリカ
監督:リチャード・ブルックス
出演:ポール・ニューマン、ジェラルディン・ペイジ、シャーリー・ナイト、エド・ペグリー、
マドレーヌ・シャーウッド
のっけから海辺の風景を映したスクリーンの前で、
運転のフリをするニューマンの姿にシラける。
物語が進んでも安っぽいセットのシーンを連発。
何だかなぁという感じなのだが、
やはりテネシー・ウィリアムズの脚本が退廃していて強烈!
『サンセット大通り』ばりの老女優キャラだけでも充分エキセントリックなのに、
猛犬のような政治ゴロたちが、ジゴロな主人公をジワジワと追い詰めていく。
白眉は権力志向の老政治家(=エド・ペグリー。本作でオスカー獲得)が、
愛人に制裁を加えるシーン。
当該女優が元々すごい顔なのだが(笑)、
彼女を最小限(?)の暴力で完膚なきまでに痛めつけようとする男の、
独裁的な異常性格が端的に表現し尽くされている。
その不気味さたるや、かのデイヴィッド・リンチさえフォロワーに感じられてしまうほど。
あの場面だけでも、観る価値アリの作品だ。
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★『ペーパー・ボーイ』
原題:THE PAPER BOY 製作年:2012年
製作国:アメリカ
監督:リー・ダニエルズ
出演:マシュー・マコノヒー、ザック・エフロン、ジョン・キューザック、ニコール・キッドマン、
マーシー・グレイ
『プレシャス』で脚光を浴びた黒人監督の2作目。
フィルムっぽい質感と色の氾濫で、60年代アメリカの雰囲気、
そしてエアコンが普及していない時代の猛暑を、器用に浮かび上がらせる。
一応犯罪ものだがギャングは出てこないし、 迫力のあるアクションシーンもない。
しかしどす黒い「闇」の存在を、さまざまな角度からズシリとした手応えで感じさせてくれる。
そんなニューロティック要素がお気に入り!
対角線上に、光り輝くばかりに愛らしいガチムチ少年を置く手腕も、
ゲイ監督ならではの感性で見事。
アルモドヴァルがガエル・ガルシア・ベルナルにホットパンツを履かせたように、
リー監督もザック・エフロンを白ブリーフ姿で「ブラブラ」させている。
近年の『WE ARE YOUR FRIENDS』然り、
青春映画を主戦場にするザックにとっては、異色の経歴か。
しかも商業的にコケたようなので、彼のキャリアの中では汚点かもしれない。
でも本作は後年、きっと再評価されるはず。
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★『陸軍中野学校』
製作年:1966年
製作国:日本
監督:増村保造
出演:市川雷蔵、小川真由美、加東大介、待田京介、村瀬幸子
ゲオには、昭和の邦画ラインナップが圧倒的に不足している。
黒澤、小津はほぼ揃っているが、溝口は1~2作、 川島雄三は『幕末太陽傳』のみ、
成瀬に至っては1作もないというていたらく(たぶん全店共通)。
なぜか東映のヤクザ映画だけが充実している。
結局バイヤーが「リアルタイムの人間しか観ない」と決めつけているのだろう。
ゲオの頭の固いところだ。
増村は『兵隊やくざ』と本作という「シリーズもの」だけが置いてあるので、
兎に角借りてみた。
軍ものかと思いきやスパイものという、意外性のある設定が面白い。
脚本にはシニカルな反戦志向が多分に込められており、
陸軍は総じて悪役として描かれる。
ただし戦友や恋人を大義のために犬死させるという、日本特有の美意識も。
スパイ養成シーンの覗き見的な面白さ、
小川真由美まで意図せずスパイになるという展開も凝っている。
冒頭の軍服ブーツには、レザーフェチ的な美しさも…。
雷蔵の出番は意外と少なく、東宝からゲスト扱いの加東の名演が印象に残る。
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★『二代目はニューハーフ』
製作年:2013年
製作国:日本
監督:OZAWA
出演:小沢仁志、ベル、山口祥行、勝矢、宮村優、美川憲一
ゲオには「ネオやくざ」なるコーナーがある。
普段見向きもしないのだが、本作は一応ゲイとして見ておこうかしらん、と手に取った。
低予算なデジタル画面の粗さはいかんともしがたいものの
(タイトルロールには営業総括担当という見慣れないクレジットもw)、
編集のテンポは平均以上に良く、
少なくとも映画的な撮影セオリーは知る人間の作品という感じ。
セットのシーンはほとんどなく、
二丁目のバーなど(個人的に)見慣れた新宿の風景の中でロケを行っており、
リアリティは自然と画面に加味されている。
テン年代に「ニューハーフを絡めた任侠ものを敢えて」という
大前提は了承して観なければならないが
(実は鑑賞し始めるまで、バブル期の作品と思い込んでいた)、
ゲイ界隈とは不可分な「軽いユーモア」を演出に取り入れているため、
暴力的な印象は随分中和されている。
「敷居を跨ぐのを憚る」という珍しい動きを伴うコメディ演出も、シュールでユニーク。
ラストの襲名シーンには『緋牡丹博徒』へのオマージュ的な雰囲気も。
女装した小沢仁志の逞しい背中を劇画化したポスターを見るにつけ、
意外とマジに東映魂を継承する意気込みだったのかも、と勘ぐってしまう。
余談として、本作を鑑賞した「僕よりも上の世代のゲイの知人」は
「ラストでなぜ小沢が女装するのか、理由をきちんと語っていない」と 憤慨していたが…。
「弟の死を悔やむ主人公が、大恩ある先代の実子の、背中を押す意味でも選んだ死装束」、
ということで良いのではないのだろうか。
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ちなみに転居先の周辺には、ゲオがない。
その代わりTSUTAYAが駅周辺にあるのだが、
中小店舗で品揃えはゲオと大差ないかも…。
今後の僕の映画ライフは、どうなっていくかしらん。