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30代の編集者/ライター。ゲイ。映画、音楽大好きですが、仕事では書く機会がなく...。ので、こちらでは趣味全開にしちゃいます。
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映画はエンターテインメントでありつつも、アートフォームであって欲しいと願っています。 同じような気持ちで映画を観ているひとの慰みになれば幸いです★
原題:Touch of Pink
製作年:2004年
製作国:カナダ/イギリス
監督:イアン・イクバル・ラシード
出演:ジミ・ミストリー、カイル・マクラクラン、
クリステン・ホールデン=リード、スレイカ・マシュー

_____________________________________________
興が乗ったので、またゲイものを観てみた。
やおいっぽい邦題と暗いパッケージから、
ダンディなカイル・マクラクランと
若者の悲恋物語を想像したのだが、全然違う。
映画よりテレビドラマなんかで放映されていそうな、
所請ハートフル・コメディである。
ユニークなのは、この映画の舞台となる英国/カナダの両社会で、
主人公が二重のマイノリティであること。
ゲイであるだけではなく、インド系なのである。
監督は自分自身の背景を、主人公に直球で投影したようだ。
しかし主人公にはイギリス人の彼氏がいて、仕事もあり、それなりに幸せである。
そこで監督は、国籍マイノリティの側面を、母親に多く背負わせた。
ゲイの息子がカムアウトして人生を謳歌するだけでなく、
母親が同国人コミニュティ内で虚勢を張るのを止め、
人生をやり直す過程を併走させたのである。
セクシュアリティをめぐる母子の相克は、
20年前『トーチソング・トリロジー』で、
とっくに、極めつけに描かれており、もはや見飽きた感すらあるが、
スポットライトはその後も、ゲイの息子のみに注がれ続けてきた。
通常のゲイ映画よりも丹念に、
息子のカムアウトを受けた母親の人生を描いた点で、この映画は新しい。
マジョリティは「自分が普通だ」と思い込んでいるからこそ、
マイノリティに、自分の幸せを押し付けてくる。
しかしこの映画に登場する母親は、自身も国籍マイノリティを背負ってきた存在だ。
そう鑑みれば、ハッピーエンドにも重みが増してくるというもの。
この作品では、ゲイの息子を持つ母親が、陰の主役なのである。
ハル・ベリー並みに美しいインド出身の女優、
スレイカ・マシューを起用したのも、納得。
製作年:2004年
製作国:カナダ/イギリス
監督:イアン・イクバル・ラシード
出演:ジミ・ミストリー、カイル・マクラクラン、
クリステン・ホールデン=リード、スレイカ・マシュー
_____________________________________________
興が乗ったので、またゲイものを観てみた。
やおいっぽい邦題と暗いパッケージから、
ダンディなカイル・マクラクランと
若者の悲恋物語を想像したのだが、全然違う。
映画よりテレビドラマなんかで放映されていそうな、
所請ハートフル・コメディである。
ユニークなのは、この映画の舞台となる英国/カナダの両社会で、
主人公が二重のマイノリティであること。
ゲイであるだけではなく、インド系なのである。
監督は自分自身の背景を、主人公に直球で投影したようだ。
しかし主人公にはイギリス人の彼氏がいて、仕事もあり、それなりに幸せである。
そこで監督は、国籍マイノリティの側面を、母親に多く背負わせた。
ゲイの息子がカムアウトして人生を謳歌するだけでなく、
母親が同国人コミニュティ内で虚勢を張るのを止め、
人生をやり直す過程を併走させたのである。
セクシュアリティをめぐる母子の相克は、
20年前『トーチソング・トリロジー』で、
とっくに、極めつけに描かれており、もはや見飽きた感すらあるが、
スポットライトはその後も、ゲイの息子のみに注がれ続けてきた。
通常のゲイ映画よりも丹念に、
息子のカムアウトを受けた母親の人生を描いた点で、この映画は新しい。
マジョリティは「自分が普通だ」と思い込んでいるからこそ、
マイノリティに、自分の幸せを押し付けてくる。
しかしこの映画に登場する母親は、自身も国籍マイノリティを背負ってきた存在だ。
そう鑑みれば、ハッピーエンドにも重みが増してくるというもの。
この作品では、ゲイの息子を持つ母親が、陰の主役なのである。
ハル・ベリー並みに美しいインド出身の女優、
スレイカ・マシューを起用したのも、納得。
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原題:I Love You Phillip Morris
製作年:2009年
製作国:フランス
監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
出演:ジム・キャリー、ユアン・マクレガー、
レスリー・マン、ロドリゴ・サントロ

__________________________________________
実在した詐欺師の半生を描いた作品。
全体的にコメディタッチなのでうっかりフィクションと思いがちだが、
劇中で繰り広げる詐欺から脱獄の手口まで、ほぼ事実というのがすごい。
その詐欺師、スティーヴン・ジェイ・ラッセルという人物には、
警察官としてのキャリアがあり、就業当時、データベース化されている
国民のプロファイルを、何らかのかたちで改ざんする術を身につけたらしい。
彼の華麗なる犯罪歴は90年代に集中しているようだが、
警察機関が本格的に導入したシステム環境を、
見事に悪用しきったケースなのだろう。
犯罪歴のある人間がまんまと大会社の要職にありつき、
信用を得たところで横領を働くなんて、すごすぎる。
その天才的な犯罪術は獄中でも存分に発揮され、
驚くほど大胆な手口で、幾度も脱獄に成功している。
彼の天性と、ずさんな米国の管理システムが絡み合って生まれた、
犯罪の芸術と呼んで差し支えないだろう。
この作品は、彼の半生を追ったノンフィクション書籍を
ベースに製作されている。
原作の論調は恐らく、一連の犯罪の由来を彼の不幸な幼少期に置き、
好意的に、アンチヒーロー化しているのではないかと思う。
実際彼は殺人などの残虐行為に走ったわけではなく、
その知性をまっとうな方向に発揮していたら、
それなりの実績も残せた人物であるに違いない。
これはこれで「あり」な視点だが、
その大胆不敵な犯罪の分析と、統合失調的なパーソナリティに焦点を当てた、
ハードボイルドな作品も作れそうな題材かと思う。
個人的には、今年初めて劇場で見た作品。
ゲイものだったので彼氏を伴って出かけたが、
映画館にはあまりゲイをみかけなかった。
同列によく笑う妙齢のノンケカップルがいたが、
「こんなつまんないとこで、そんなに笑う?」という感じで、
まだまだツボがおわかりになっていないご様子。
使用されている音楽にもオカマ心に響くものは特になく、
全体的に、ゲイものならではの演出は控えめだ。
そんな中絶賛したいのは、ユアン・マクレガー。
もともとナイーヴな青年役のイメージが強い彼だが、
ウケのゲイにあるひとつの類型を、非常によく研究してきていた。
身の回りにゲイがいない人の目にかかると、
サラッと流されそうなのが心配なほどの、名演技。
僕の目には、途中から友だち(外専)の姿が完全にオーバーラップしており、
「あ~いるいる、こういう子!」と、思わず唸ってしまった。
感情の発露から小首の傾げ方まで、
成り切るというか、憑依の域に達している感じなのである。
思わず、役者としての彼を強くリスペクトした次第。
製作年:2009年
製作国:フランス
監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
出演:ジム・キャリー、ユアン・マクレガー、
レスリー・マン、ロドリゴ・サントロ
__________________________________________
実在した詐欺師の半生を描いた作品。
全体的にコメディタッチなのでうっかりフィクションと思いがちだが、
劇中で繰り広げる詐欺から脱獄の手口まで、ほぼ事実というのがすごい。
その詐欺師、スティーヴン・ジェイ・ラッセルという人物には、
警察官としてのキャリアがあり、就業当時、データベース化されている
国民のプロファイルを、何らかのかたちで改ざんする術を身につけたらしい。
彼の華麗なる犯罪歴は90年代に集中しているようだが、
警察機関が本格的に導入したシステム環境を、
見事に悪用しきったケースなのだろう。
犯罪歴のある人間がまんまと大会社の要職にありつき、
信用を得たところで横領を働くなんて、すごすぎる。
その天才的な犯罪術は獄中でも存分に発揮され、
驚くほど大胆な手口で、幾度も脱獄に成功している。
彼の天性と、ずさんな米国の管理システムが絡み合って生まれた、
犯罪の芸術と呼んで差し支えないだろう。
この作品は、彼の半生を追ったノンフィクション書籍を
ベースに製作されている。
原作の論調は恐らく、一連の犯罪の由来を彼の不幸な幼少期に置き、
好意的に、アンチヒーロー化しているのではないかと思う。
実際彼は殺人などの残虐行為に走ったわけではなく、
その知性をまっとうな方向に発揮していたら、
それなりの実績も残せた人物であるに違いない。
これはこれで「あり」な視点だが、
その大胆不敵な犯罪の分析と、統合失調的なパーソナリティに焦点を当てた、
ハードボイルドな作品も作れそうな題材かと思う。
個人的には、今年初めて劇場で見た作品。
ゲイものだったので彼氏を伴って出かけたが、
映画館にはあまりゲイをみかけなかった。
同列によく笑う妙齢のノンケカップルがいたが、
「こんなつまんないとこで、そんなに笑う?」という感じで、
まだまだツボがおわかりになっていないご様子。
使用されている音楽にもオカマ心に響くものは特になく、
全体的に、ゲイものならではの演出は控えめだ。
そんな中絶賛したいのは、ユアン・マクレガー。
もともとナイーヴな青年役のイメージが強い彼だが、
ウケのゲイにあるひとつの類型を、非常によく研究してきていた。
身の回りにゲイがいない人の目にかかると、
サラッと流されそうなのが心配なほどの、名演技。
僕の目には、途中から友だち(外専)の姿が完全にオーバーラップしており、
「あ~いるいる、こういう子!」と、思わず唸ってしまった。
感情の発露から小首の傾げ方まで、
成り切るというか、憑依の域に達している感じなのである。
思わず、役者としての彼を強くリスペクトした次第。
原題:VALENTINO
製作年:1977年
製作国:アメリカ
監督:ケン・ラッセル
出演:ルドルフ・ヌレエフ、レスリー・キャロン、
ミシェル・フィリップス、キャロル・ケイン

_______________________________________
ハリウッド史上に燦然と輝くサイレント時代の美男スター、
ヴァレンチノの生涯を描いた伝記映画。
監督は灰汁の強いケン・ラッセルで、
僕のようにヴァレンチノの出演作品を観たことがない者でも、
充分楽しめる内容に仕上げてくれている。
ヴァレンチノを演じるのは、ロシアが生んだ天才バレエダンサー、
ルドルフ・ヌレエフ。
俳優としての映画出演はこれが初だったのではないかと思うが、
甘いマスク、美しく鍛え上げられた肉体、
そして洗練されたDUDE(っていうかオネエ)の所作までを備える彼には、
これ以上ないほどのはまり役だ。
また、ヴァレンチノのステージ・ワイフ役として、
元ママス&パパスのミッシェル・ウィリアムスが出演している。
ヌレエフの起用を活かすため、
アルゼンチン・タンゴの名手だったというヴァレンチノが、
ニューヨークの酒場でダンサーとして生計を立てていた
時代のエピソードも積極的に導入。
野次を飛ばすVIP気取りの上客に、
アーティスティック・リヴェンジを果たす場面は、痛快このうえない。
憎まれ役を徹底的にやりこめる演出は、毒気たっぷり。
女性の衣装や化粧もかなり頽廃的に作り込まれているので、楽しい。
この場面だけでも観る価値がある映画といえそうだ。
反面、ヴァレンチノを取り巻く悪意を誇張した、
牢獄や拳闘の場面に漂う濃厚な毒には、少々アテられ気味。
彼の死を以て完結する物語のため、
カタストロフィへ向かうに連れ、観ているのがしんどくなるほどだった。
しかしヴァレンチノの生涯を
「女からとことん愛された分、男(と袖にした女)から足を引っ張られた色男」
と見て、手加減なく描いた思いきりのよさがいい。
去年劇場で観たシャーリー・マクレーン主演の
『ココ・シャネル』は全然面白くなかったが、
伝記映画だって、ここまでエキセントリックに作り上げられるのだ。
やはり監督の個性とか力量とかは、映画の要である。
製作年:1977年
製作国:アメリカ
監督:ケン・ラッセル
出演:ルドルフ・ヌレエフ、レスリー・キャロン、
ミシェル・フィリップス、キャロル・ケイン
_______________________________________
ハリウッド史上に燦然と輝くサイレント時代の美男スター、
ヴァレンチノの生涯を描いた伝記映画。
監督は灰汁の強いケン・ラッセルで、
僕のようにヴァレンチノの出演作品を観たことがない者でも、
充分楽しめる内容に仕上げてくれている。
ヴァレンチノを演じるのは、ロシアが生んだ天才バレエダンサー、
ルドルフ・ヌレエフ。
俳優としての映画出演はこれが初だったのではないかと思うが、
甘いマスク、美しく鍛え上げられた肉体、
そして洗練されたDUDE(っていうかオネエ)の所作までを備える彼には、
これ以上ないほどのはまり役だ。
また、ヴァレンチノのステージ・ワイフ役として、
元ママス&パパスのミッシェル・ウィリアムスが出演している。
ヌレエフの起用を活かすため、
アルゼンチン・タンゴの名手だったというヴァレンチノが、
ニューヨークの酒場でダンサーとして生計を立てていた
時代のエピソードも積極的に導入。
野次を飛ばすVIP気取りの上客に、
アーティスティック・リヴェンジを果たす場面は、痛快このうえない。
憎まれ役を徹底的にやりこめる演出は、毒気たっぷり。
女性の衣装や化粧もかなり頽廃的に作り込まれているので、楽しい。
この場面だけでも観る価値がある映画といえそうだ。
反面、ヴァレンチノを取り巻く悪意を誇張した、
牢獄や拳闘の場面に漂う濃厚な毒には、少々アテられ気味。
彼の死を以て完結する物語のため、
カタストロフィへ向かうに連れ、観ているのがしんどくなるほどだった。
しかしヴァレンチノの生涯を
「女からとことん愛された分、男(と袖にした女)から足を引っ張られた色男」
と見て、手加減なく描いた思いきりのよさがいい。
去年劇場で観たシャーリー・マクレーン主演の
『ココ・シャネル』は全然面白くなかったが、
伝記映画だって、ここまでエキセントリックに作り上げられるのだ。
やはり監督の個性とか力量とかは、映画の要である。
原題:頤和園
製作年:2006年
製作国:中国/フランス
監督:ロウ・イエ
出演:ハオ・レイ、グオ・シャオドン、フー・リン、
チャン・シャンミン、ツアン・メイホイツ

_________________________
中華映画はここのところご無沙汰だったのだが、
先日この監督の『ふたりの人魚』を観た。
本気で物語を描くことからは、少し距離を置いている感じだったが、
作品性があったので興味が湧き、本作を観てみようと思った。
天安門事件の渦中に大学生時代を過ごした恋人同士を描いているのだが、
当のふたり、若さとエネルギーを、
民主化に向けさほど注ぎ込んだクチでもない。
ただがむしゃらに何かに向かおうとする情熱だけは持ち合わせており、
そこで共鳴し合って結ばれただけ。時代に巻き込まれたのである。
政情に不満や関心の薄い時代であれば、
何か別の表現に向かう同志であったに違いないのだ。
たくさんの若さや才能を無駄にしてしまうのが、
政情不安やその先にある戦争の怖さ。
日本の安保闘争も然りだが、理想実現への行動が挫かれた後には、
”シラケの時代”が待っている。
天安門事件の混乱の中、男と別れた主人公の女は、
次々に別の男と関係を結ぶようになる。
思想を深めることが無駄だと「わかってしまった」以上、
最も手っ取り早いやり方で、フィジカルに自分を伝えようとすることだけが、
彼女の情熱の向かう先なのだ。
そうして「愛される」ことについては未成熟なまま齢を重ねた彼女は、
いつも心の拠り所であった...つまり知らず知らずのうちに
心の中で理想化していた...男と再会し、
ふたりが同じように、砂を噛むような日々を送ってきたことを
思い知るのである。
「目的なく孤独に生きる」とは、劇中のセリフだが、
本作の狙いは、登場人物と同世代の人々の心にぽっかりと空いた
空虚な穴を、丹念に描くことにあったようだ。
観ることで浄化された中国人もいるだろう。
またある程度の普遍性も持ち合わせており、
日本人の私にも共感できる場面が、たくさんあった。
それにしても、中国の近現代を描いた映画は、単純に興味深い。
ウォン・カーウァイが90年代の香港を、
スタイリッシュな映像に刻み込んだのには感動したが、
それ以前のものとなると、レスリー・チャンが出演している
80年代の娯楽映画ぐらいしか観たことがないのだ。
ブルース・リーやジャッキー・チェンのアクション映画には
いまのところ興味ないし...。
本作で描かれた、中国学生寮の世界は初めて目にするし、
「ヤリマンはいるのね、やっぱり」と思ったりもして、
すべてが新鮮に見えた。
『ふたりの人魚』では、「河」を舞台に現代の若者の生活を
カッコ良く切り取っていたし、この監督の新作が、今後も楽しみ。
製作年:2006年
製作国:中国/フランス
監督:ロウ・イエ
出演:ハオ・レイ、グオ・シャオドン、フー・リン、
チャン・シャンミン、ツアン・メイホイツ
_________________________
中華映画はここのところご無沙汰だったのだが、
先日この監督の『ふたりの人魚』を観た。
本気で物語を描くことからは、少し距離を置いている感じだったが、
作品性があったので興味が湧き、本作を観てみようと思った。
天安門事件の渦中に大学生時代を過ごした恋人同士を描いているのだが、
当のふたり、若さとエネルギーを、
民主化に向けさほど注ぎ込んだクチでもない。
ただがむしゃらに何かに向かおうとする情熱だけは持ち合わせており、
そこで共鳴し合って結ばれただけ。時代に巻き込まれたのである。
政情に不満や関心の薄い時代であれば、
何か別の表現に向かう同志であったに違いないのだ。
たくさんの若さや才能を無駄にしてしまうのが、
政情不安やその先にある戦争の怖さ。
日本の安保闘争も然りだが、理想実現への行動が挫かれた後には、
”シラケの時代”が待っている。
天安門事件の混乱の中、男と別れた主人公の女は、
次々に別の男と関係を結ぶようになる。
思想を深めることが無駄だと「わかってしまった」以上、
最も手っ取り早いやり方で、フィジカルに自分を伝えようとすることだけが、
彼女の情熱の向かう先なのだ。
そうして「愛される」ことについては未成熟なまま齢を重ねた彼女は、
いつも心の拠り所であった...つまり知らず知らずのうちに
心の中で理想化していた...男と再会し、
ふたりが同じように、砂を噛むような日々を送ってきたことを
思い知るのである。
「目的なく孤独に生きる」とは、劇中のセリフだが、
本作の狙いは、登場人物と同世代の人々の心にぽっかりと空いた
空虚な穴を、丹念に描くことにあったようだ。
観ることで浄化された中国人もいるだろう。
またある程度の普遍性も持ち合わせており、
日本人の私にも共感できる場面が、たくさんあった。
それにしても、中国の近現代を描いた映画は、単純に興味深い。
ウォン・カーウァイが90年代の香港を、
スタイリッシュな映像に刻み込んだのには感動したが、
それ以前のものとなると、レスリー・チャンが出演している
80年代の娯楽映画ぐらいしか観たことがないのだ。
ブルース・リーやジャッキー・チェンのアクション映画には
いまのところ興味ないし...。
本作で描かれた、中国学生寮の世界は初めて目にするし、
「ヤリマンはいるのね、やっぱり」と思ったりもして、
すべてが新鮮に見えた。
『ふたりの人魚』では、「河」を舞台に現代の若者の生活を
カッコ良く切り取っていたし、この監督の新作が、今後も楽しみ。
原題:The Heiress
製作年:1949年
製作国:アメリカ
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド、モンゴメリ・クリフト、
ラルフ・リチャードソン、ミリアム・ホプキンス

________________________
ザッツ・エンターテインメントの煌びやかな世界が飽きられ、
犯罪映画が大きな人気を博した頃のハリウッド映画には、
いま見ても新鮮な心理劇を題材にした作品が数多い。
この映画もそうした佳作のひとつだった。
SFXなどが登場する前の時代だから、
脚本と演出がよく練り上げられ、曖昧さのないプロの仕事が楽しめるのだ。
監督とプロデューサの間に諍いさえ起きていなければ、の話だが...。
本作は、内気で純なカマトトが、自らの財産が引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、
スレっからしに成長する(?)までを描いた、シニカルな1本。
厳格で愛情に乏しい父親との関係を、
きっちり描いているので全体に説得力がある。
ヒロインを演じたのは、オリヴィア・デ・ハヴィランド。
前半と後半では声の出し方まで違う、念入りなキャラクター作りが見事だ。
主演作を初めて観たが、この熱演でオスカーの栄冠に輝いている。
個人的には『女王エリザベス』や『ふるえて眠れ』など、
ベティ・デイヴィスとの共演作が印象に残っているのだが、
ふたりは私生活でも親友同士。
そういえばこの作品には、ベティと縁の深い人物が多く関わっている。
まず監督のウィリアム・ワイラーは
ベティ主演の映画を何本も撮っており、恋仲も噂された。
ミリアム・ホプキンスとベティは、男を巡り険悪な間柄だったというが、
それを踏まえたうえでキャスティングされた『旧友』という作品があるので、
観たくてしょうがない。しかし、日本でのソフト化は実現していない。
ベティと関係ないところでは、モンゴメリ・クリフトがジゴロ役で出演している。
『陽のあたる場所』よりも前の出演作で、まだ若々しい美貌が光り輝いていた。
製作年:1949年
製作国:アメリカ
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド、モンゴメリ・クリフト、
ラルフ・リチャードソン、ミリアム・ホプキンス
________________________
ザッツ・エンターテインメントの煌びやかな世界が飽きられ、
犯罪映画が大きな人気を博した頃のハリウッド映画には、
いま見ても新鮮な心理劇を題材にした作品が数多い。
この映画もそうした佳作のひとつだった。
SFXなどが登場する前の時代だから、
脚本と演出がよく練り上げられ、曖昧さのないプロの仕事が楽しめるのだ。
監督とプロデューサの間に諍いさえ起きていなければ、の話だが...。
本作は、内気で純なカマトトが、自らの財産が引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、
スレっからしに成長する(?)までを描いた、シニカルな1本。
厳格で愛情に乏しい父親との関係を、
きっちり描いているので全体に説得力がある。
ヒロインを演じたのは、オリヴィア・デ・ハヴィランド。
前半と後半では声の出し方まで違う、念入りなキャラクター作りが見事だ。
主演作を初めて観たが、この熱演でオスカーの栄冠に輝いている。
個人的には『女王エリザベス』や『ふるえて眠れ』など、
ベティ・デイヴィスとの共演作が印象に残っているのだが、
ふたりは私生活でも親友同士。
そういえばこの作品には、ベティと縁の深い人物が多く関わっている。
まず監督のウィリアム・ワイラーは
ベティ主演の映画を何本も撮っており、恋仲も噂された。
ミリアム・ホプキンスとベティは、男を巡り険悪な間柄だったというが、
それを踏まえたうえでキャスティングされた『旧友』という作品があるので、
観たくてしょうがない。しかし、日本でのソフト化は実現していない。
ベティと関係ないところでは、モンゴメリ・クリフトがジゴロ役で出演している。
『陽のあたる場所』よりも前の出演作で、まだ若々しい美貌が光り輝いていた。