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30代の編集者/ライター。ゲイ。映画、音楽大好きですが、仕事では書く機会がなく...。ので、こちらでは趣味全開にしちゃいます。
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映画はエンターテインメントでありつつも、アートフォームであって欲しいと願っています。    同じような気持ちで映画を観ているひとの慰みになれば幸いです★
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製作年:2001年
製作国:日本
監督:橋口亮輔
出演:田辺誠一、高橋和也、片岡礼子、
つぐみ、秋野暢子、冨士真奈美



___________________________________

僕はゲイなのに、こと日本のゲイ映画に関すると
あまり観てきていないなぁ、なんてふと思い当たり、この作品を探した
(まぁ、それほど作品がないせいもあるんだけど)。
公開当時にはもう二丁目デビューも済んでいたので、
映画館で観ていても良さそうなものなのに……、我ながらひねくれている。
たぶん身内ウケの雰囲気に交わるのを、
潔しとしない気分があったのだろう。
実際、ゲイバーのシーンに登場するエキストラの中には、
個人的に知った顔が見受けられた。

登場人物のライフスタイルを紹介する意味もあり、
前半には「ゲイ映画のお約束」的な展開も、ちらほら。
それだけだったら、この映画に
あまりいい印象を持たなかったと思うのだが、
主人公の里帰りあたりから、映像にはグッと深みが増してくる。
ゲイにとってのサンクチュアリである都会の歓楽街だけでなく、
草深い田舎を背景に登場させる手法は、
野心的なゲイ映画にとって、必要不可欠な試みであるに違いない。

1992年に公開されている『きらきらひかる』同様、
本作のテーマは”新しい家族のかたちの模索”である。
自分、或いは相手がゲイであることを受け入れ、
それでもなお家族たらんとする男女の苦闘を描いていること、
またその成否を明示しないエンディングまでが、同じ。
10年経って、表現は何も変わっていないのか、と思わないでもないが、
橋口監督自身がゲイであり、また脚本を担当していることもあって、
内容はより深く突き詰められ、構造も多重化しているところを、評価しておきたい。

サバサバしていて、意見をはっきりと言う直也(高橋和也)と、
グジグジしていて優柔不断な勝裕(田辺誠一)のゲイカップルは、
性格の明暗が分かれるが、
”新しい家族のかたち”に対し、保守的な意見を持っているのは、
直也のほうである。
性格がはっきりしている分、物事を白黒に分けてしまい、
結果としてストレートのために作られた社会の規範に、
自ら収まろうとしてしまうのだ。
橋口監督は、グレーの可能性を放棄してしまうゲイの哀しい潔さを、
これまでのどの日本製ゲイ映画よりも、自然に描いている。

また古い家族制を必死に貫いてきたストレートたちが唱える、
何人にも決して否定することは難しい正論も、
本作の中では肯定的に描かれている。
”新しい家族のかたち”を奨励したいと願いながら、
それは簡単なことではないんだぞ、
ひとつひとつの困難を確実に乗り越えられるのか、問い質していくべきだ、
と監督は考えているわけだ。
そうした厳しさが結果として物語に深みを与え、
どこに出しても恥ずかしくない一定のクオリティを、
映画全体に与えているのではないか、という印象を受けた。

つまらないテレビドラマに脇役として出演していた俳優たちが、
ひとりの役者として、個性や力量を発揮している姿にも瞠目した。
冨士真奈美のコメディエンヌぶりはオカマ以上にキャンプで、
恐らくゲイもストレートも、等しく笑わされてしまうだろう。
また個人的に最も気に入ったのは、なぜかゲイの登場人物ではなく、
被害者意識に凝り固まった田舎の人妻(秋野暢子)。
そのキャラクターを魅力的に輝かせているのは、陰日向のない関西弁で、
修羅場に響き渡る怒声にさえ、どこか清々しい実直さが貫かれている。
標準語とは似て非なる、その響きの妙を味わいつくせるのは、
字幕に頼らず台詞を耳で楽しめる、日本人だけの特権なのだ
(本作はカンヌ映画祭の監督週間にも招待され、欧米でも公開されている)。

話が逸れてしまったが、今日本の芸能界で俳優の地位は総じて低く、
映画の世界でさえ、タレントに活躍の場を奪われている。
しかし、そんな中でも逞しく鍛え上げられてきた彼らのパフォーマンスは、
本作のような、エンタメの主流から一歩外れた映画の中で確認できるわけだ。
もっと近年の邦画も観なくては、と改めて感じさせてくれた作品だった。

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