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30代の編集者/ライター。ゲイ。映画、音楽大好きですが、仕事では書く機会がなく...。ので、こちらでは趣味全開にしちゃいます。
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原題:春风沉醉的晚上
製作年:2009年
製作国:中国/フランス
監督:ロウ・イエ
出演:ジャン・チョン、チェン・スーチョン、タン・ジュオ、
ウー・ウェイ、ジャン・ジャーチー、チャン・ソンウェン



___________________

ロウ・イエ監督の最新作。

去年の今ごろ『天安門、恋人たち』(2006年)を観て、
このブログに「新作が楽しみ」なんてのん気なことを書いていたのだが、
監督は天安門事件を描いたばかりに、
国から「映画製作を5年間禁じる」処分を受けたという。
すっかり資本主義化している中国とはいえ、
表現を取り締まる法規制はいまだ健在なのだ。

本作は画面がやたらグラグラしているうえに照明も暗くて、
俳優たちの表情さえよく見えない。
なんだってハンディカメラでこんな観づらい映像を撮っているのか、
これがスタイルのつもりなのかとイライラしたのだが
(というか、平衡感覚がヤラれて頭が痛くなった)、
そんな背景があったとは……。
資金はフランス、香港から助成してもらい、
撮影は国内でゲリラ的に行ったというのだから、頭が下がる。
苦境の中で勇敢に映画作りと向き合っている監督の熱意には、感動させられた。

本作の主人公はゲイなのだが、
中国社会において同性愛は、単なる性の嗜好にとどまらず、
「全体に逆らう生き方」として、二重の異端である。
たまたま先日、大連に一年間留学していたという
ゲイの知人と話す機会があったのだが、
街中にはゲイバーやディスコがあり、
ひと目で同族とわかるゲイとすれ違うこともあるとかで、
開放は進んでいるようだ。
しかし国家のイズムに反する存在として、
負い目を感じるプレッシャーは相当なものだろう。
個を貫くか否か、葛藤する同性愛者の姿は、
現代の中国映画において、さまざまな思想を投影できる格好の素材なのである。

前作と同じく、政治性が前面に押し出された作品ではないが、
環境から生じる影響が、物語に映し出されているのは当然のこと。
中国社会を覆う閉塞感は、外国人に実感として伝わりにくいが、
そんな描写の中にこそ、
現代中国映画の貴重なアイデンティティが含まれていることに、瞠目すべきだろう。
本作に対し「もっと普遍性を」などと的外れな批判を述べる批評家もいるようだが、
そうした意見は、規制を行う中国当局の態度を助長させることを、
よく自覚してもらいたい。

物語は、男×男×女の三角関係が、
奇妙な着地点を見出すのかと思わせたうえで、
最後にきっちりと帳尻合わせを行っている。
「どんな生き方を支持するのか」という監督の意見が
非常に明快に伝わってきたので、好感が持てた。
端正なジャン・チョン、
ガチムチで愛嬌のあるチェン・スーチョンというキャスティングからは、
ゲイ観衆の反応も念頭に入れていることがうかがえる。
次作はフランスで、外国人キャストと撮影中らしいが、
制限のない環境で描くはじめての映画だけに、
真価の問われる作品となりそうだ。

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