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30代の編集者/ライター。ゲイ。映画、音楽大好きですが、仕事では書く機会がなく...。ので、こちらでは趣味全開にしちゃいます。
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原題:SAFE
製作年:1995年
製作国:アメリカ
監督:トッド・ヘインズ
出演:ジュリアン・ムーア、ザンダー・バークレー、
ピーター・フリードマン



_________________________________

ニュー・クイア・シネマの旗手として注目されたのち、
メジャーでも成功を収めたトッド・ヘインズ監督の作品で、
「化学物質過敏症」に陥った女性を描く。

本作のヒロインは、高級住宅街にある豪邸で何不自由ない生活を送りながらも、
内面に底知れぬ空虚を抱えている。
やがて精神のバランスを崩した彼女は、
牛乳にはじまり、消毒剤などの化学物質に壮絶な拒否反応を示すようになる。

当時の医学(設定は80年代後半)ではこの病に明確な治療法がなく、
医師や家族からは事実上、見放されてしまう。
そしてヒロインは、同じ病に苦しむ人々が生活する、
人里離れたコミューンにたどり着く。

コミューンの指導者はヒロインやその他の者に、
 「病の原因を他人や社会に求め、責めてはならない」
 「病を含め、自分を愛しなさい」
と説く。
集会場で輪唱したり、皆でいたわり合う様子は、
まるで精神病院か新興宗教のよう。
しかし健常者としての生活が送れず、
医師から明確な病とも診断されない者には、
安らぎを求めるための選択肢がほかにない。
また指導者が提案するセラピー以上の治療法も、ないわけである。

監督はこの過酷な現状に題材を求めながらも、
劇中に登場したコミューンの指導者と同じく、
症状の発症には、何らかの心因的なストレスが加担している、
と考えているように見えた。


僕も環境に拒否反応を示した経験がある。
僕の場合は科学物質ではなく、「音」だった。
壁の薄い築数十年のアパートに住んでいた時期、
階下に引き籠りらしい男性が住んでおり、
夜中じゅう流しているアニメビデオの音で、不眠症になりかけたのだ。
その時期、布団の中でイライラと考え続けていたのは、
 「なぜこんな夜中にテレビを見続けているのか、他人の迷惑を考えないのか」
という、ともすれば厄介な正義感に基づく正論や、
 「明日も仕事なのに眠れない。一体どうすればよいのか」
という不安に基づく被害妄想が多かったような気がする。
幸いこの映画のヒロインのように、
生活の中でひきつけを起こすまでには至らなかったが、
また同じ状況に陥ったらどうなるのか、自分でもわからない。

苦しんだ時期から現在まで、騒音に関して他人に意見を求めると、
世の中には「周りがうるさくても寝れる」という人が、意外に多いことがわかった。
つまり些細な音を「騒音」と捉えてしまう原因は、自分の中に潜んでいるのである。

本作のヒロインは、内気で自分の意見をまともに言うことができない。
作品内ではついに明確にされないが、過去にもトラウマを抱えているようである。
不満を吐き出せず内部に溜め込む一方で、発散する術を持っていないのだ。
強靭な理性に抑圧された身体は、
些細な化学物質(=自然由来ではない物質)に
拒否反応を示すことで、大暴走するのだろうか。
現代社会に生きる怖さについて、改めて考えさせられた。

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